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医療法人の社員総会・理事会の招集手続や開催方法などの重要ポイントを一覧整理

医療法人には最高意思決定期間である社員総会や全ての理事で組織し医療法人の業務執行を決定する理事会という機関があります。これらの会議体では株式会社でいうところの株主総会や取締役会と同様に、招集手続や決議、議事録の作成を要する点では似ていますが、株式会社の機関とは異なり医療法などに基づき各手続が定められています。

このような医療法人の社員総会や理事会について、会議の開催方法によっては招集手続等のバリエーションが考えられますので、招集手続、会議の開催の有無、議決要件・方法、議事録作成の要否など混乱しやすい各ポイントを一覧により整理しました。

なお、下記図表は、主な要点を整理したものであり、すべての法規制や論点を網羅したものではありません。対象となる医療法人によって定款の内容が異なるなど結論や要件が異なる場合もありますので、詳細を具体的にご確認されたい医療法人様においては、お気兼ねなくご相談いただければと存じます。

 

 

[1] 社団型医療法人 社員総会の手続フロー

 

※簡易ルート1の招集通知省略、簡易ルート2の書面決議は、医療法において有効に行うことができるとする規定は存在しないものの、一般社団法人法において認められているため有効に行うことができるという解釈に基づくものですが、医療法の条項が存在しないことからすると、有効性について争いとなる余地が残りますので、実際に開催する本来ルートを推奨いたします。

 

手順 時期・タスク 本来ルート 簡易ルート1
(招集通知省略)
簡易ルート2
(みなし決議)
ポイント1 ポイント2
0 1の招集通知発送前 招集通知作成、理事長確認 議案作成、理事長確認 提案書作成→理事長確認    
1 総会日の5日以上前
(通知到達日~総会日前日まで5日以上)
招集通知送付 招集通知省略 ①議案内容を記載した提案書を送付。
②社員全員から提案についての同意書を取得
招集者は、原則「理事長」
ただし、実際に招集通知を送付する事務手続を行うのは、事前に理事長に招集通知の内容の確認を取った上であれば誰でも可能。
社員総会の目的事項(議題であり、議案までは不要)を記載し、定款で定めた方法による。
・定款の制限がなければメールも可
・招集通知に記載がない事項は原則決議不可。
全員出席の場合のみ可能と考えられる。
・議決権行使書を同封しておく。
・決算承認時には、招集通知に監事の監査を受け理事会で承認された事業報告書等の提供を要する。
2-1 総会日
(定款上の定期総会の時期・回数は要チェック)
社員総会開催 社員総会開催
全員出席の上開催同意

※医療法上の根拠まではない
  社員総会の議長は都度選任 総会開催時に出席できない社員は事前に議決権行使書又は代理出席の委任状を取得しておく。
2-2       不開催
社員全員から同意書を取得できれば書面決議があったものとみなされる。
   
3 開催・議決要件 総社員の過半数の出席で開催
出席者の議決権の過半数で決議
(定款に別段の定めがある場合はそれに従う)
左に同じ   議長は社員として議決に参加不可。
可否同数の場合には議長の決するところによる。
特別利害関係人は出席して討議に加わることはできるが、議決権はない。
通達上「(イ) 開催された日時及び場所(当該場所に存在しない理事、監事又は社員が出席した場合における当該出席の方法を含む。)」と記載があり、テレビ会議による開催も可能と考えられる。
4 議事録作成 必要 必要 必要 ①社員総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない理事、監事又は社員が社員総会に出席した場合における当該出席の方法を含む。)
②社員総会の議事の経過の要領及びその結果
③特別利害関係人の氏名
④監事の選解任等にかかる社員総会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
⑤社員総会に出席した理事又は監事の氏名
⑥社員総会の議長の氏名
⑦議事録の作成に係る職務を行つた者の氏名
社員総会の日から10年間議事録原本を主たる事務所に、5年間議事録コピーを従たる事務所にそれぞれ備え置く必要あり。
5 その他留意点 ・総会招集の手続きや決議の方法が法令・定款に違反する場合、決議が原則無効となる。
・社員総会議事録の備え付け、所定記載事項の不記録・虚偽記載等には20万円以下の過料規定あり(医療法93④)。

 

 

[2] 社団型医療法人 理事会の手続フロー

 

手順 時期・タスク 本来ルート 簡易ルート1
(招集通知省略)
簡易ルート2
(みなし決議)
ポイント1 ポイント2 ポイント3
0 1の招集通知発送前 招集通知作成、理事長確認 議案作成、理事長確認 提案書作成→理事長確認      
1 理事会開催日の1週間以上前
(通知発送日~理事会開催日まで1週間以上)
※定款で1週間を下回る日数とすることも可。
招集通知発送 招集通知省略
理事・監事全員から招集通知省略の同意が必要
①議案内容を記載した提案書送付。
②理事全員から提案についての同意書を取得(監事からの異議もないこと)
招集者は定款に従う(理事長又は各理事とされていることが一般的)
ただし、実際に招集通知を送付する事務手続を行うのは、事前に招集権者に招集通知の内容の確認を取った上であれば誰でも可能
・特に方法についての規定はないが、理事会 の目的事項(議題であり、議案までは不要)を記載し定款で定めた方法によることがよい。
・定款の制限がなければメールも可
・決算承認時には、監事の監査を受けた事業報告書等の理事会の承認を要する(医療法50条6項)。
競業取引・利益相反取引は理事会の承認を要し(一般社団法人法84条)、さらに当該理事は、競業取引・利益相反取引実行後の理事会への事後報告義務あり(同法92条2項)。
この場合理事会議事録に、意見又は発現内容の概要記載する必要あり。
2 理事会開催日
(定款上の理事会の開催時期・回数は要チェック(一般社団法人法91条2項))
理事会開催 理事会開催 不開催 理事会の議長は定款で理事長とされていることが一般的    
3 開催・議決要件 理事数の過半数の出席で開催
出席者の議決権の過半数で決議
(定款に別段の定めがある場合はそれに従う)
理事全員から同意書を取得できれば書面決議があったものとみなされる。 一般社団法人法施行規則15Ⅲ①に、理事会議事録の記載事項として、「理事会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない理事、監事又は会計監査人が理事会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)」と記載があり、テレビ会議による開催も可能と考えられる。 議長の議決参加可否は法令に特段の規定なし。特別利害関係人は議決に参加不可のため、定足数・議決権にも含めない。
ただし、理事長選出の理事長候補者は特別利害関係人には当たらない。
 
4 議事録作成 必要 必要 必要
但し、①理事会決議があったものとみなされた事項の内容、②同事項を提案した理事の氏名、③決議があったものとみなされた日、④議事録作成を行った理事の氏名(規則31条の5の4第4項)
【記載事項】
①開催年月日及び時刻、出席方法
②開催場所
③定数及び出席者氏名、特別利害関係理事の氏名
④議案
⑤議案に関する発言内容
⑥議案に関する表決内容
⑦議事署名人の署名、署名年月日(出席理事全員が署名するか、理事会において議事署名人を選任して被選任者が署名する)
出席した理事及び監事全員は署名又は記名押印しなければならない。
ただし、定款にて全理事ではなく理事長のみとする定めがある場合は理事長で足りる。
理事会の日から10年間議事録原本、書面決議の場合には同意の意思表示書面も、主たる事務所備え置く必要あり(医療法46条の7の2Ⅰ、一般社団法人法97Ⅰ)
5 その他留意点 ・理事会は、①重要な資産の処分・譲受け、②多額の借財、③重要な役割を担う職員の選解任等は理事に委任不可(医療法46の7)。
・総会招集の手続きや決議の方法が法令・定款に違反する場合、決議が原則無効となる。
・理事会議事録の備え付け、所定記載事項の不記録・虚偽記載等には20万円以下の過料規定あり(医療法93④)。
 

 

 

[3] 書面決議、書面による議決権行使、委任状出席の可否

 

  書面決議(みなし決議)
物理的に会議を開催しない。
書面による議決権行使
物理的に会議を開催するが、欠席者が書面によって議決権行使。
委任状出席
物理的に会議を開催するが、欠席者の代わりに代理人が出席。
社団型医療法人 社員総会 × △(定款で禁止されなければ可能)
医療法46条の3の3Ⅴ
△(定款で禁止されなければ可能)
医療法46条の3の3Ⅴ
理事会 △(定款に定めがあれば可能)
医療法46条の7の2
× ×
財団型医療法人 評議員会 × × ×
理事会 △(定款に定めがあれば可能)
医療法46条の7の2
× ×

 

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