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医療法人設立の要件とは?設立までの一般的な流れも併せて解説

 医療法人は、医療法の定めによってのみ、社団又は財団により設立することができますが、医療法人を設立するには、都道府県知事の認可を受けなければなりません。

 今回は、医療法人設立の要件及び、設立までの一般的な流れを併せて解説します。

要件

(1)人的要件

・社員

 社員は、社員総会の構成員であり原則3名以上でなくてはなりません。

 出資持分の定めのある医療法人の場合、出資者と社員は異なりますが、出資していない者であっても定款における資格要件を満たすことにより社員になることができます(18歳以上が望ましいとされている)。ただし、営利を目的とする株式会社は出資持分を保有することはできますが、社員や役員にはなれません。

 また、出資の有無や出資額には関係なく、社員は社員総会における議決権を一人一票ずつ有します。

 

・理事

 理事の人数は、理事長を含め3名以上であることが要件です。

 理事の任期は2年を超えることはできませんが再任可能です。

 ただし、診療所を1カ所のみ開設する医療法人の場合、都道府県知事の認可を受ければ理事は1名又は2名でも認められます。病院や診療所等の管理者は原則として理事でなければならず、医療法人が複数の病院等を開設する場合は最低でも管理者の人数以上の理事が必要となります。

 理事長は、医師又は歯科医師である理事から原則選任します。

 さらに、他の医療法人と理事長を兼務することは不適当であるとされています。

 

・監事

 1名以上であることが要件です。

 監事は、医療法人の理事、評議員、職員を兼任することができません。

 また、理事の親族、出資した社員、顧問税理士、顧問弁護士等は監事になれません。

 

・評議員

 評議員は、財団たる医療法人には必ず置くこととなっています。社団であっても特定医療法人には必要となりますが、他の社団医療法人においては、評議員の設置は任意となります。 なお、評議員は、医療法人の理事、監事、職員を兼任することができません。

 

・その他

 上記以外には、欠格事由(法人が医療法人の役員や評議員にはなれないなど)に該当しないことなどが挙げられます。

 そして、設立当初の役員は、社団法人の場合には定款にて、財団法人の場合には寄附行為をもって定めておく必要があります。

 

(2)資産要件

 医療法人は、開設する病院等の業務に必要な施設、設備、資金などの資産を有している必要があり、それに見合った拠出も求められます。

 

・不動産

 開設する法人の土地や建物は、原則として法人が所有しているものが望ましいですが、賃貸借契約が長期(概ね10年間以上)かつ、確実なものである場合は、賃貸でも認められるものとされています。なお、賃借人が借地借家法に基づき第三者対抗要件を具備している場合には、賃借権登記がなくとも設立認可は認められています。これら賃貸借は、理事長からの賃借ということでも可能ですが、支払う賃料は配当類似行為と評価されないように適切な金額とすることに留意を要します。なお、当該理事長個人との賃貸借契約について、設立の場合には設立総会において承認がなされているため、理事会での利益相反取引にかかる承認までは不要と考えられますが、理事会における承認を得ておく対応を求められる場合もあります。

 

・資金

 社会保険診療報酬が入金されるまでの運転資金として、原則として、年間支出予算の2ヶ月分に相当する額以上の現金や預金を有していることが望ましいとされます。持分の定めのない医療法人の設立の場合、2か月の運転資金を、基金制度を設けることにより確保することが多いですが、税務面の問題を除き、設立者からの寄附で運転資金を賄うことも可能とされています。ただし、設立時拠出可能な財産は拠出者に所有権があり、かつ医療法人に拠出することが適切なものである必要があり、個人事業時に有していた一部のものについては拠出ができないこととされていますので留意が必要です。

 なお、旧医療法では設立時の資産要件として、自己資本比率20%以上であることが必要でしたが、医療法改正により当該要件は現在ではなくなっています。

 

・その他

 医療法人の設立にあたって、現物拠出又は寄附すべき財産が医療法人に不可欠のものであるときは、その財産の取得又は拡充のために生じた負債(例えば、土地にかかる借入金や薬品にかかる買掛金など)は、医療法人の負債として取り扱って差し支えないとされています。ただし、負債が財産の従前の所有者が当然負うべきもの又は、医療法人の健全な管理運営に支障をきたすおそれのあるものである場合には、医療法人の負債として認められません。創業資金に関する借入金は、医療法人への債務承継が困難とされています。

 以上の資産要件の実際の適用に関しては、都道府県知事の裁量もあり、都道府県により対応が異なる場合もあります。

 上記以外には、開設者個人が診療所・病院を開設して1年または2年以上の期間にわたって、安定的な経営をしている実績が、都道府県によっては必要な場合もありますので確認を行う必要があります。

流れ

 医療法人設立認可申請を行える時期は、都道府県によって異なっています。

 また、設立までの流れは、各都道府県によって異なりますが、一般的には以下のような流れとなりますので、概要をご紹介します。詳細については、ご自身が申請をする都道府県の情報を必ずご確認ください。

 

・医療法人設立に関する説明会

 都道府県によって説明会や事前相談会が行われます。開催の有無や日程、出席義務について確認を要します。例えば、大阪府では、設立認可申請を予定している場合には必ず事前登録を行い、その後ウェブサイトにて動画視聴による説明がなされることとなっています(令和4年度)。この事前登録を行わなければ仮申請など先の手続へ進めないこととなっていますので注意が必要です。

 

・定款・寄附行為(案)の作成

 医療法人の設立には、定款又は寄附行為をもって、以下に掲げる事項を定めなければなりません。運営管理指導要綱において、各医療法人の定款・寄附行為はモデル定款・寄附行為に準拠していることとされており、モデルからかけ離れた定款・寄附行為は認可されない可能性があります。

① 目的

② 名称

③ 開設しようとする病院等の名称及び開設場所

④ 事務所の所在地

⑤ 資産及び会計に関する規定

⑥ 役員に関する規定

⑦ 理事会に関する規定

⑧ 社団たる医療法人にあっては、社員総会及び社員たる資格の得喪に関する規定

⑨ 財団たる医療法人にあっては、評議員会及び評議員に関する規定

⑩ 解散に関する規定

⑪ 定款又は寄附行為の変更に関する規定

⑫ 公告の方法

 

・設立総会の開催

 発起人全員で設立総会を開催し医療法人の基本的事項を決定し、議事録を作成します。

 

・設立認可仮申請書の作成・提出(仮受付)

 一般的に年2回の受付で、締め切りは各都道府県により異なります。例えば、大阪府でも令和4年度は、年2回(7月初旬から7月下旬、1月初旬から1月下旬)とされています。

 

・事前審査

 各都道府県で設立認可申請書の審査が行なわれます。設立代表者に対してのヒアリングや適宜の補正なども行われます。

 

・設立認可申請書の作成・提出(本申請)

 

・医療審議会での審議

 医療法人の認可についての審議が行なわれます。都道府県知事は、医療法人設立認可を決定するにあたっては、必ず事前に都道府県医療審議会の意見を聴くことが必要となります。

 

・医療法人設立認可についての答申

 医療法人設立を認可する旨の答申が行なわれます。医療法上、設立認可決定の基準として、①医療法第41条の資産要件を満たさない場合、②定款又は寄附行為の内容が法令に違反する場合にはその認可をしないこととされています。

 

・設立認可書の交付・受領

 

・医療法人設立登記

 医療法人設立認可後、2週間以内に管轄の法務局で登記を行います。

 

・登記完了(医療法人設立)

 約1~2週間で設立登記が完了します。医療法人は、設立登記を行うことによって成立します。そして、設立時に財産目録を作成し、主たる事務所に備え置かなければなりません。

 

・拠出金の払込み

 

・登記完了届の提出

 登記完了届および登記簿謄本を各都道府県または保健所に提出します。

 

・保健所への各種届出

 病院(診療所)開設許可申請などを行います。

 

・社会保険事務局又は社会保険事務所への各種届出

 保険医療機関指定申請書などの提出を行います。

 

・税務署他関係書類の提出

 税務署等諸官庁へ事業開始に伴う各種届出を行います。

 

 以上が医療法人開設までの流れです。

 通常、半年程度かかる長い手続きとなります。例えば、大阪府では、「設立事前登録」から最終的に「法人病院開設」に至るまで、約10か月のスケジュールとされています(令和4年度)。

 

 今回は、医療法人設立の要件と設立までの流れを併せて解説しました。

 特に設立の流れは複雑で、スケジュール的に余裕をもつ必要があり、多くの書類を不備なくスムーズにそろえなくてはなりません。そのため、専門家に相談や依頼することをおすすめします。

 

 Yz法律事務所では、多数の医療法人に関する専門知識とノウハウを活かした実践的なアドバイスを行い、法務のサポートをしています。設立に限らず、医療法人の法務に関して何かお悩みごとがございましたら、Yz法律事務所に一度ご相談ください。

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