【弁護士が解説】相続における遺留分とは?権利者や割合など
相続が開始した際、各相続人の相続分は、遺言書や遺産分割の内容によって決定されます。
もっとも、遺言書の内容が、ある特定の者にのみ財産を譲るという内容であった場合や、財産分配の割合に偏りがあった場合などには、親族間のトラブルが発生する可能性も否めません。
しかし、このような場合であっても、兄弟姉妹又はその代襲相続人以外の各相続人には、最低限相続することができる範囲が定められており、これを「遺留分」といいます。
この遺留分制度は、相続人保護のために設けられた制度であるため、遺言によっても奪うことはできません。
以下では、遺留分が認められている者の範囲や、遺留分の計算方法、遺留分相当額を取り戻すための方法などについて解説していきます。
遺留分が認められる者の範囲について
遺留分が認められるのは、以下の範囲の相続人です(民法1042条1項)。
①配偶者
亡くなった人(被相続人といいます。)の夫や妻が相続人になる場合、これらの者には遺留分が認められます。
②直系卑属
子どもや孫、ひ孫など直系の子孫を「直系卑属」といい、遺留分が認められます。
③直系尊属
親や祖父母など、被相続人の直系の先祖を「直系尊属」といい、遺留分が認められます。
他方で、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められません。
また、民法には、遺留分を有する推定相続人(相続が開始したときに相続人となるもの)が被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えたり、著しい非行をしたときは、被相続人の請求により、当該推定相続人を相続人から除外する、「相続人の廃除」という制度が存在します(民法892条)。
相続人の廃除の決定がなされた場合、廃除された相続人は相続人となる資格を失い、遺留分も認められません。ただし、相続人の廃除は、廃除された者との関係でのみ有効であり、当該相続人に子どもがいる場合には、当該子どもが自動的に代襲相続することになります。その代襲相続人自身も被相続人に対して虐待や重大な侮辱を行っているなどの事情があり、代襲相続されることを阻止したいという場合は、代襲相続人についても別途、相続人の廃除の手続をとる必要があります。
相続人の廃除の手続には、被相続人が生存中に家庭裁判所に審判を申し立てる生前廃除(民法892条)の方法と、被相続人が遺言で廃除の意思を表示し、相続開始後に遺言執行者が家庭裁判所に審判を申し立てる遺言廃除(民法893条)の方法があります。
遺留分の算定方法について
遺留分は、遺留分権利者の法定相続分(民法900条)の2分の1(親又は祖父母のみが相続人である場合には3分の1)です。
・法定相続割合について
民法が規定する各相続人の法定相続割合は以下のとおりです。
①子及び配偶者が相続人となる場合
子・配偶者の法定相続割合はそれぞれ2分の1ずつです。
例えば、配偶者と子2人が相続人となる場合、配偶者の法定相続割合は相続財産の2分の1、子の法定相続割合はそれぞれ4分の1ずつ(4分の1×2分の1)です。
②配偶者および直系尊属が相続人となる場合
配偶者および直系尊属の法定相続割合は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1です。
③配偶者および兄弟姉妹が相続人となる場合
配偶者および兄弟姉妹の法定相続割合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。
・遺留分の計算例
以上を前提に、父が死亡し、その妻及び2人の子が相続人となる場合を例にあげて遺留分について計算を行います。
まず、妻の法定相続割合は相続財産の2分の1です。
そして、遺留分は、この法定相続割合の半分ですので、妻の遺留分は相続財産の4分の1となります。
次に、子について検討すると、子の法定相続割合は2分の1ですので、今回の事例における子一人の法定相続割合は4分の1となります。
そして、遺留分は、この法定相続割合の半分ですので、子1人の遺留分は相続財産の8分の1となります。
以上は、各相続人の遺留分が、「相続財産」のいくらの割合を有することになるのかについてのご説明となりますが、具体的な金額を算定するにあたっては、「遺留分を計算するための相続財産」がいくらなのか、を確定させる必要があります。
この点、「遺留分を計算するための相続財産」は、被相続人が亡くなった時点で保有していた財産額と同じではなく、以下の計算式で算定されます。
「被相続人が相続開始の時に有していた財産額」+「生前に被相続人が贈与した財産額」-「被相続人の債務の全額」
上記計算式のうち、「生前に被相続人が贈与した財産額」について問題となりますが、以下のとおりの区分に従って金額が算出されることになります。
①相続開始1年前までの贈与 ⇒ 全額が加算対象
②婚姻・養子縁組・生計の資本としてなされた贈与 ⇒ 相続開始から遡って10年前までの贈与が加算対象
③被相続人と受贈者の双方が、その贈与により遺留分が侵害されることを知ってなされた贈与 ⇒ 時期に関わらず全額が加算対象
遺留分相当額を取り戻す方法について
遺言の内容によって、自分の遺留分を下回る財産しか得られない結果となった場合、遺言によって財産を取得した者に対し、遺留分侵害額請求権を行使する(2019年7月1日の相続法改正前は遺留分減殺(げんさい)請求と呼ばれていました)ことになります。
行使の方法については、法律上特に規定がありませんので、遺留分侵害請求権を行使する相手方に対し、「遺留分侵害額請求権を行使する」旨の意思表示をすれば足ります。
もっとも、遺留分侵害額請求権には時効が存在し、遺留分が侵害されていることを知ってから1年、または相続開始から10年が経過するまでに行使しなければ、遺留分侵害額請求権を行使することはできなくなってしまいます。
したがって、遺留分侵害額請求権を行使したこと、行使した日付を証拠として残しておくことが重要であり、行使の意思表示は、内容証明郵便にて行うことが一般的です。
遺留分侵害額請求権を行使した場合は、前記計算式にて算定された遺留分相当額が現金で弁償されるか、遺言で取得した財産のうち遺留分に相当する分の現物返還がなされることとなります。
相続に関することはYz法律事務所におまかせください
遺留分侵害額の請求にあたっては、対象となる相続財産を正確に把握すること、自己の遺留分額を正確に把握することが重要です。
Yz法律事務所では、相続に関する問題を多数扱っており、財産調査を含めたさまざまな手続きをおこなってきた実績がありますので、お悩みの方は、一度ご相談いただければと存じます。
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