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内部通報制度において社内窓口と社外窓口のどちらを置くべきか

 企業のコンプライアンス経営を推進するため、社内のリスク情報を吸い上げるための仕組みとして、内部通報制度の関心が高まっています。202261日施行の改正公益通報者保護法により、従業員数301名以上の事業者においては、内部通報制度を整備する法的義務も課せられることとなりました。今回は、内部通報制度の意義・目的と、内部通報制度において社内窓口と社外窓口のどちらを置くべきか、という点について解説したいと思います。

 

【1 内部通報制度の意義・目的】

 

 社内における不祥事を発見するための通常のルートは、日常的に行われている上司の部下に対するモニタリング、リスク管理部門や総務部における事業部門のモニタリング、さらに内部監査部門によるモニタリングといった、自主監査です。

 

 もっとも、大会社になればなるだけ、内部監査部門だけで現場を事細かにチェックし、不祥事を発見することは現実的に困難です。そのため、現場からのボトムアップ的な不祥事発見ルートが社内のリスク情報を吸い上げるために非常に有効であるといえます。

 

 そこで、近年では、多くの事業者において、コンプライアンス経営の推進を目的として、通常の不祥事発見ルートでは発覚しがたいリスク情報をできる限り早期に把握するために内部通報制度の設置が置かれています。これにより、株主や消費者その他のステークホルダーの信頼を確保し、企業価値の維持向上を図ることができ、さらには、企業のリスク情報を認識した者によりマスコミや行政機関へ外部通報されることが抑止され、企業の信用が毀損されるという二次被害も阻止することができるのです。

 

【2 内部通報制度において社内窓口と社外窓口のどちらを置くべきか】

 

事業者が内部通報制度を置く場合、

①社内窓口のみ設置するパターン(人事総務部、法務部などにのみ設置するパターン)

②社外窓口のみ設置するパターン(顧問弁護士や内部通報窓口専属の弁護士、あるいは内部通報対応を行う専門の民間業者にのみ窓口を設置するパターン)

③社内窓口と社外窓口の両方を設置するパターン

の3つのパターンがあり得ます。

 

 まず、①社内窓口のみを設置するパターンのメリットは、通報に対応する者が社内の人間だけになりますので、正しい対応ができれば迅速に解決を図ることができ、また、案件処理に要する経済的なコストがかからないという点にあります。

 他方、社内窓口のみの設置とした場合、通報後の対応が通報者の満足のいかない内容になると、案件の調査が公正にされていないのではないかという不信感に繋がりかねません。

 また、多くの事業者では人的リソースが限られており、内部通報窓口専属の従業員がいる事業者はほとんどありません。したがって、他の業務で忙しい従業員が内部通報対応をしなければならないという場面が発生し、窓口担当者の負担が大きいということもいえるでしょう。

 さらには、社内窓口のみだとすると、経営陣が不正に関与しているような案件については、社内窓口に通報しても適切な解決が図られない可能性が高そうだということで通報がためらわれ、内部通報がされずにマスコミや行政機関等への外部通報がなされてしまい、会社の信用が損なわれる事態となる、という面もデメリットと考えられます。

 このような観点からすれば、弁護士など、内部通報に関する検討・調査について専門的なノウハウのある第三者を社外窓口に委嘱することが検討されるべきと考えます。

 

 これに対し、②社外窓口のみを設置するパターンは、内部通報規程の作成から、実際に通報があった場合の調査、調査後の再発防止策の検討や人事処分等の事後対応といった、内部通報制度全般について専門的なノウハウのある第三者が内部通報に関与することになりますので、事業者にとっては人的コストをかけずに法的リスクを最小化でき、通報者にとっては安心して相談、通報することができるため、通報が促進される、といったメリットがあるといえます。

 他方、内部通報事案を調査する場面では、なぜ社外の人間が調査しているのか、という話になりかねませんが、本来は、通報があったということ自体も秘密として取り扱われなければなりません。そうすると、例えば、関係者に対しヒアリングする場合も、誰をヒアリング対象にするのかといったことや、どのような理由で調査していることとするかなどについて、社内の従業員と連携を図りながら調査を実施する方が適切な対応を図ることができます。

 

 したがって、③の社内窓口と社外窓口の両方を設置するのが最も望ましいと考えます。

 実際にも、平成28年度の消費者庁の調査において、社内窓口と社外窓口を併設している事業者が約60%という調査結果も出ており、当時より内部通報制度に対する関心が強まっていることを考えると、より多くの事業者が社内窓口と社外窓口を併設しているものと思われます。

 

 なお、社外窓口について顧問弁護士に依頼する事業者が多く存在します。これは、日常的に相談をしている顧問弁護士に対する信頼感や、当該事業者特有の事情について認識している顧問弁護士の方が適切な通報対応が図れるのではないかという期待が理由と考えられます。

 しかしながら、顧問弁護士が窓口であれば、通報者の目線から見ると、公正な調査をしてもらえないのではないかという不信感を覚え、それゆえ行政機関やマスコミなどの外部通報に繋がる可能性があるという点、特に経営陣が関与する不正事案の通報がなされた場合、通報者から相談を受けてしまうと、利益相反の観点から顧問弁護士が当該事業者側に立つことができなくなってしまうという点はデメリットとして挙げられます。

 上記メリット、デメリットを考慮して、社外窓口を顧問弁護士に委嘱するかどうかご判断いただく必要があります。

 

 今回は、内部通報制度の意義・目的と、内部通報制度において社内窓口と社外窓口のどちらを置くべきかどうか、という点について解説しました。通報後の対応には、専門的なノウハウとスピード感、信頼感が重要ですので、法律の専門家である弁護士を社外窓口に設置する内部通報制度を設計することをおすすめします。

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